2025年08月

『中東 世界の中心の歴史』

『中東 世界の中心の歴史』(202411月初版発行)を読んだ。

著者のジャンピエール・フィリユはパリ政治学院の教授。中東の近現代史が専門。

フランス外務省で中東政策を担当したのち学者に転じた。

日本人は、中東というとイスラム教の世界で豊かな産油国がある、くらいの

大雑把な認識が主流のような気がする。

中国史のように多くの歴史小説などで触れる世界ではなく、

遠い砂の世界のように漠然としている。

過激派のテロの影響もあり、宗教でなぜそこまで対立するのか、宗教が根っこに

あるから対立は消えないとか、やおよろずの神々の国の人間はえてしてそんなふう

に思うわけである。

しかし、本当に宗教があるから、あるいは宗教だけで対立しているのか?

パレスチナの問題はなぜあそこまで破滅的にこじれてしまったのか?

以前から疑問に思っていたとき、本屋でこの本を見つけた。

ローマ帝国の東西分割から現代までの1600年の中東の歴史、

三つの大陸の交差点、文明の発祥地とその交易路の中心であり、

三つの一神教の発祥地である中東について、

西側中心史観を脱却して描き出されている。

十字軍の時代にしても宗教を越えて共通の敵と戦うことは当たり前にあったわけで、

キリスト教とイスラム教の対立という西欧的あるいは紋切型の歴史観では理解できない

ことがあるわけである。

本書はそういう日本人には馴染みの薄い中東の歴史を紐解いてゆく。

歴史を学ぶということはその歴史の延長線上に未来を見るということである。

化学兵器を使うのはレッドラインだとオバマはシリアのアサドに示したが、

実際、アサドが自国民に対し化学兵器を使ったとき、

アメリカは結局なにもしなかった。

それを見たプーチンが、西側は結局座視するだろうと踏んでクリミアを併合した。

現在のウクライナの戦争は、

プーチンがオバマを見切ったとき既に芽を吹いていたと言っていいのかもしれない。

同じことはトランプについてもいえるだろう。

オバマの戦略的忍耐もトランプのディールも、

相手への間違ったメッセージになるかもしれない、あるいはなったのかもしれない。

そう思うとき、ウクライナについてもパレスチナについても、あるいは暗澹とした

未来しか当面は描けないのかもしれない。

ひさしぶりに読み応えのある一冊だった。

一読を勧めたい。


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ハラスメント

税理士会の研修会、今回は税法とかではなく「ハラスメント防止研修」。

ハラスメントって結構難しい。

顧問先でもハラスメントの問題は起きるわけで、税理士としてはその辺も理解して

いなければ、適切なアドバイスができないわけである。

職場でのハラスメントは、えてしてお互いの認識の差異から生じるわけだが、

とりあえず相手がハラスメントと受け取ればハラスメントだという。

正直言うと、その辺はいささかの違和感は覚える…(^^;

一方の認識だけでジャッジするというのは本来は危険を含んでいるのだが…。

それはそれとして、それが現状だということで研修を聞く。

まず、いろいろなハラスメントがあるということにあらためて驚く。

パワーハラスメント

セクシャルハラスメント

モラルハラスメント

アルコールハラスメント

マタニティハラスメント

カスタマーハラスメント

この辺は知っているのだが、

パタニティハラスメントとか、ハラスメントハラスメント、マルハラスメント。

パタニティハラスメントは男性が育休を取ろうとして職場で嫌がらせを受けるとか

不利益な扱いを受けるとかいうもの。

ハラスメントハラスメントは正当な言動や指導に対し過剰にハラスメントだと

反応すること。

マルハラスメントはメールとかの末尾に句読点があるとそれが怖いと感じる若者が

いるらしい。う~ん…。とりあえずそれもハラスメントなのね…(^^;;。

実際の事例を聞くとなかなか難しいのもある。

セクハラを受けていると会社の担当者に相談した女性が、周囲がセクハラといわれるのが

嫌で話しかけなくなり職場で孤立し、今度はモラハラ(無視)を受けていると相談して

きたという事例。

職場のコミュニケーションが成立していないんだろうな…。

面白いと思った事例は、

仕事でミスをした若い社員のために上司が土曜日に一緒に出社して、

何件かの取引先を手分けして電話で謝ったのだそうな。

そうしたら、若い社員、自分に振り分けられた分への電話が終わり、その社員の

代わりにまだ謝罪の電話をしている上司に「終わりましたから帰ります」と言って

帰ろうとしたらしい。

上司は当然怒るわけである。

「おまえのミスを謝罪しているのに帰るとは何事だ!  そんなことなら会社を辞めろ!」

と怒鳴ったそうな。

そしたら、その若い社員、次の日から出社しなくなり、5日後に会社に

「上司のパワハラで精神的苦痛を受け…云々」という医者の診断書が送られてきたという。

結局、金で和解したらしいが、講師の社会保険労務士は、

「医者の診断書が送られてきたら、もうダメだと思ってくたさい。

ただ、このケースは出社しなくなってから5日後に診断書が届いていて早すぎます。

そういう人だったのかもしれません…」と言っていた。

ちなみに「会社を辞めろ」は絶対言ってはいけない言葉であると。

昔は平気で言っていたよね。「そんなことなら辞めてしまえ!」。

そういうのもあるのかと思った事例は、

妊娠して退職した女性社員、講師の社会保険労務士の顧問先で、労務士自身が本人に

面接して自己都合での退職と確認したのだが、職安から電話がかかってきて、

「本人は会社に辞めさせられたと言ってます」と。

職安の話では本人は「自分は退職したくなかったが社長が怖くて言えなかった。

心の中で辞めたくありませんと言っていました」と。

職安というのは心の中で言ったという声が聞こえなかったのは違法だと言うのだろうか?

ただ、そのときその労務士はふと気づいて社長に聞いたそうな。

「社長さん、彼女が子供が出来たと言ったとき、嫌な顔とかしました?」

社長さん、仕事が出来なくなるなと思って嫌な顔をしてしまったらしい。マタハラである。

この事例について、講師の社会保険労務士が言うには、

「最近はネットにいろいろな情報が溢れていて、こういうふうに言えば通るとか、

お金が取れるとか、そういうのを読んで言ったのではないか」と。

う~ん、そういう事例があると、

ハラスメントの問題は同時に会社の危機管理の問題でもあるということである。

ハラスメントは当然排除されるべきもので、

良い職場環境の確保は重要である。

同時にハラスメントの問題は別の側面として職場を委縮させる可能性もあるわけで、

その辺の兼ね合いが難しいのだろう。

なかなか面白い研修だった。


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  研修会風景

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