2023年04月

雪降りて

雪降りて起伏あらはな冬の山(きれ)の深さが四方(よも)より迫る

                      / 小澤婦貴子

 

小澤婦貴子の第六歌集『雪紐』のなかの一首。

無雪期、緑に覆われた起伏にしか見えない山も、

雪が積もるとひとつひとつの山襞がくきやかに浮き上がり、

特に天気の良い日などは山がはっきり見えるようになる。

私の住んでいる横浜からも冬になると雪の積もった丹沢の山なみが

夏とはまるで違うくきやかな姿で見える。

ところで、結句の「四方より迫る」はどう読むのだろうか。

「裂の深さ」とは山を裂く谷の深さであろう、

それが「四方より迫る」。

そうすると、山なみ全体ではなく、

そのなかのひとつのピーク、ひときわ高いピークかもしれない、そのピークに

向かって四方から(もちろん裏側は見えないわけだが)谷がせり上がっている、

そういう感じか。

冬の北アルプスの五竜岳とか鹿島槍とか、

山なみのなかで周囲より高い、そういう山がこんなふうに見えるかもしれない。

最初さらりと読んだときは、全体としての冬のくきやかな山なみを思い浮かべたのだが、

よく読んでみると、ちょっと違うのかもしれないと思ったのである。

歌の読みはやはり面白い。


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  射場でキンランが咲いた。絶滅危惧種。


加賀美アーチェリー

先週の週末、アーチェリーの仲間と山梨の加賀美アーチェリーに行ってきた。

土曜日と日曜日の2日間アーチェリーをしようということで近くの石和温泉に宿泊を

取っていたのだが、土曜日が雨だったので予定を変更。土曜の昼過ぎに射場に集合して

横浜を出発、そのまま石和温泉。とりあえず温泉に入り飲んで楽しむ。

飲んで騒いで翌朝、なにやらもうことが終わったような気分で石和から射場へ(^^;

この時期、一宮御坂のあたり桃が一面に咲いていて綺麗なのだが、

今年は桜も桃も早いのだろう、射場のあたりで少し咲いていたくらいで、

下の方は終わっていたのが残念だった。

天気を心配していたのだが、射場に着いたときには青空が広がっていた。


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 加賀美の射場のしだれ桜。例年だとGWの頃に咲くのだが、今年はもう満開を過ぎている。

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  練習場

支度をしてまずは距離表示のあるコースを一回り。

加賀美のコースなかなか厳しくて、的を外すと矢がその辺の石に当たって壊れたり、

的の向こうの沢に飛んでいってしまい見つけられなくなってしまうとか、

アーチャーを苦しめるのが趣味なのかと思うようなコースなのだが、

その辺の緊張感がまた面白いわけである。

起伏の多い山の中のコースだが新緑が美しい。


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 射ちおろし、結構遠い。
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 新緑のなかを弓を射ちながら進む

午後からは距離表示のないアンマークドのコース。

フィールドアーチェリーは山野のなかにある12の的を射ち、その点数を競うのだが、

射つ位置から的までの距離表示が普通はついている。その距離を見て射つわけである。

距離表示のないアンマークドは自分で的までの距離を目測して射つ。

それだけ難しいし、おまけに的が木の間の向こうにあったりすると、

遠近法の効果なのか距離感が変わるのである。

その辺も頭に入れながら距離を測る。

目測した距離が当たっているかどうかは、矢を射ってみればわかるわけだが、

実際より近く目測すれば矢は手前に落ちるし、遠くに目測すれば的をオーバーする。

加賀美のコースはそういう難しさがあって面白いわけで、

新緑の季節とか紅葉の季節に訪れたいと思う。

天気も良く気分のいい新緑の森のなかを歩きながらアーチェリーを楽しんだ一日だった。


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  休憩所から

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  向こうに八ヶ岳が見える

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 ここは何メートルだ...?

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  射場のアツモリソウの群落

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 アツモリソウ、既に蕾がついている。例年だとGWあたり、やはり今年は早い。

遺言・遺産分割における意思能力

税理士は認定された研修を年36時間以上履修することが義務付けられていて、

それを履行できないと履修未達者ということで名前を公表される。

ちなみに私の令和4年度の研修履修時間は40.5時間。

確かに税法は毎年変わるので常に勉強していないと、

税法を知らない税理士になってしまうわけである。

先日の支部での研修は、遺言・遺産分割における意思能力。

遺言状が作成されたとき本人に意思能力があったのか相続人の間で争いになることは

あるわけで、遺言状の作成や遺産分割協議にかかわることの多い税理士にとって、

重要なところである。

弁護士の講師による裁判例を紹介しながらの講義だったが、なかなか面白かった。

幾つかの裁判例のなかで、凄いなと思ったのは、

アルツハイマーを発症した被相続人の、

相続人のひとりAに遺産のほとんどを相続させるという自筆証書遺言について、

遺言能力なしで無効とされた事案。

裁判の過程で証拠として被相続人の音声の録音が提出されたのだが、

それは被相続人がA以外の他の相続人について怒る内容のものを読み上げている

ものなのだが、途中、何度も録音の中断があり、しかも、「止めて」と指示している

Aと思われる声も録音されている。

さらにそれとは別に、被相続人が遺言を読み上げている別の録音もあったのだが、

途中つかえると録音を停止してやり直したりしていていた。

結局、この不自然さから、

裁判所はこの録音をAが作成したものを被相続人に指示して

読み上げさせたものと判断した。

録音をとってまで被相続人の意思であるという証拠にしようとしながら、

公正証書遺言が作成されなかったことも、

公証人による本人の意思能力の確認を回避しようとしたものと受け取られたらしい。

結局、Aは自分の提出した証拠の録音のために裁判で負けたわけである。

それにしても、この録音を証拠として提出するとき、

これを出したらむしろヤバイかもしれないと思わなかったのだろうか。

思わなかった時点でAの頭は遺産に取りつかれていたのかもしれない。

こういう仕事をしていると人間のもろもろの部分を見ることがあるのだが、

修羅場はやはりあまり見たくない。

無用なトラブルを避けるためにも、しっかりクライアントに助言できるよう

な税理士でいたいと思う。


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 アーチェリーの射場の石楠花がすでに満開

京都 桜2

京都2日目。午後の新幹線で帰るので歩き回れるのは昼過ぎまでである。

で、とりあえず東山方面、テキトーに歩いて知恩院に行ってみる。

黒門から入り、北門を抜けて境内へ。

すっかり海外からの観光客が復活して、

あちこちから英語、スペイン語? 中国語、韓国語が聞こえてくる。

以前、このブログで「大航海時代ならぬ大観光時代がやってくる」と書いたことがある。

そのころと比べて海外からの観光客は数倍に増えた。

観光は日本を支える一大産業になるはずで、

新型コロナがようやく収束し、海外からの観光客が回復したのは明るいニュースである。

境内から三門に下る。

ここにあるのが男坂で、いつもは八坂から歩いてきて三門から入り、男坂を登って

境内に入り黒門から出るのだが、今日はその逆を歩いている。

登っていたときはそれほど気にしなかったが、下ろうとして下を見ると、

この男坂、かなり急である。

メキシコのピラミッド並み(^^;

あらためて気づいて驚いた。

足腰の弱い人は男坂はくだらない方がいい。隣の女坂をくだった方がいいだろう。


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 知恩院 黒門

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 北門 門の向こうに桜が見える
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 男坂の上から三門を見下ろす
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 三門 外側から

知恩院を出て丸山公園。

桜の綺麗な公園である。

見るとテーブルと椅子が並んでいて空いているところもある。

店員に聞いてみると席料500円で一時間座れるらしい。

酒と食べ物はその店か周囲の屋台で買えばいいみたいで、

フードコート的な花見スポット。

こういう花見をしようとは思っていなかったが、

天気もいいし、せっかくなのでちょっと座ってビールを飲んでゆく。

桜の下に座り込んで酒を飲むというのは、あまり好きな方ではないのだ。

西行ではないが、花は静かに眺めていたい。

ま、たまにはいいだろう(^^;;

しばらく飲んで八坂神社へ。


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 円山公園 桜の下でしばしビール

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 八坂神社

ここから四条通りに出て、賀茂川の桜は昨日充分見たので、

木屋町の高瀬川沿いの桜を眺めながら昼飯を食べられるところを探していたら、

いつのまにか五条通りに出てしまった。

五条通りには飲食店はあまりないので、そのまま地下鉄の五条まで歩き、そこから京都駅。

昼食を摂り、土産を買って、いつものように今日の夕飯にいづうの鯖寿司を買って

新幹線で帰った。

1日目20K2日目12K。桜の下をよく歩いた2日間だった。



京都 桜

願はくは花のしたにて春死なむその如月の望月の頃

 

西行の歌。

個人的には西行はあまり好きではない。

出家するとき蹴落としていったのか弟に懇ろに頼んでいったのか、どちらが本当かは

知らないが、幼い子供を捨てていくような無責任なヤツは好きじゃない。

しかし、歌はいい。

西行はこの歌の通り、桜の咲く頃、死んだ。

西行の最後の目に桜はどんなふうに映ったのだろう。

 

今年は開花が早く桜も早く終わってしまいそうだったが、

桜を見たい一心で京都に行ってきた。

終わりかけの桜かなと思っていたが、

満開になってから雨が降ったりして気温が下がったためか満開のままの桜に出会えた。

京都駅から地下鉄で北山、そこから賀茂川沿いに上賀茂神社へ。

賀茂川沿いは満開の桜が続いている。

天気も良く、土手のあちこちで花見をしている。

上賀茂神社までは行けど行けど桜である。

途中の店でビールを飲んで軽く昼食。

そのすぐ先の橋のところを曲がると上賀茂神社だった。


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 賀茂川沿いの桜

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 ひたすら桜が続く
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 桜を眺めつつ昼食
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 上賀茂神社

広いというか、広やかな神社である。

奈良の神社や寺にそういう広やかなところが多いが、

上賀茂神社は京都でも最古の神社のひとつなので似ているところがあるのだろうか。

境内の桜を見、再び賀茂川に戻り、川沿いに下賀茂神社を目指す。

歩いてきた桜のトンネルを南にくだり、京都府立植物園のところからは

半木の道というしだれ桜の続く道になる。

これでもかこれでもかというくらい桜が続く。

つくづく京都は桜が多いなと思う。


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 上賀茂神社の桜

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 細殿
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 こっちからの方が桜の眺めはいいかな
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 賀茂川沿い 半木の道
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 ひたすら桜

ようやく下賀茂神社。

糺の森って桜は少ないんだなと妙に感心しながら森のなかの参道を本殿へ。

ここも静かで気持ちのいい社である。

京都で好きなところのひとつ。

このあとさらに桜の続く賀茂川沿いを南にくだり新京極近くのホテルへ。


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 糺の森

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 下賀茂神社
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 下賀茂神社の南 賀茂の飛び石

しばし休憩して夕食はいつものように先斗町。

テキトーに飲んで食べて、二軒目は数年前に見つけたヌエストラカーサ。

テキーラの飲める先斗町の隅の小さなバーである。

店内にはメキシコによくあるカラベラがある。

日本人にとって髑髏は不吉だが、メキシコではそうではないらしい。

それにしても、京都まで来てなんでこんな先斗町の隅っこの場末感たっぷりの

小さなバーを見つけてしまうんだろうなと
思いつつテキーラを楽しむ。



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 先斗町の居酒屋で夕食

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 のどぐろの焼魚
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 ヌエストラカーサ
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 とりあえずテキーラ
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 二杯目はマルガリータ

締めはヌエストラカーサで教えてもらった一番京都らしいラーメンという

木屋町の大豊ラーメン。

木屋町通りをしばらく行くと黄色い看板があり、細い路地を入るのだが、

近くに立っていたどこかの店の
客引きが「大豊ラーメンならここですよ」と

親切に教えてくれた。

行ってみると数人行列していて評判店であるらしい。

スープは醤油ベース。麺はどちらかといえば細いかな。

確かに美味い。酒によく合うラーメンである。

逆にしらふだと少し濃いのかな。

なるほどこれが京都らしいラーメンかと満足し、

木屋町の高瀬川沿いの夜桜を眺めつつホテルに戻る。

一日の半分、桜の下を歩いていたような日だった。


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 一番京都らしいラーメンと教えてもらった大豊ラーメン

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 これが京都らしいラーメン

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 木屋町 高瀬川沿いの夜桜を眺めながらホテルに帰る

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