しばらく前に受けた税務相談。
〇〇信託の遺言信託を利用していてご主人が亡くなった。
相続人は奥さんひとりで、夫婦ともに自分が亡くなったときは全財産を配偶者に
相続させるという遺言状を作っていた。
で、遺言信託により〇〇信託が遺言執行人になって相続の関係を仕切ったわけだが、
遺言状で配偶者が全財産を相続することになっているので特に問題もなく、
相続税の申告をし、不動産の相続登記をし、銀行関係の相続手続きをすれば
それで終わりである。
で、担当者がやってきて、銀行関係の相続手続きの報酬が100万です、と言ったそうだ。
奥さんは、その金額を聞いてびっくりしたわけである。
知り合いがやはりご主人が亡くなったあと、そういう銀行関係の手続きを全部自分で
やったという話を聞いていた奥さんは、「自分でやります」と言ったそうな。
そうすると、〇〇信託の担当者は、
「そういうふうに仰る方いらっしゃるんですが、結局できなくて頼んでくるんですよね~」
と言って帰ったらしい。
ちなみに、その100万の報酬に相続税の申告と不動産の相続登記の費用は入っていない。
それは税理士と司法書士がやるので別報酬。
そのケースの場合、実質的には被相続人の戸籍等の収集と銀行関係の相続手続き、
それだけである。
戸籍の収集はご主人もともと地元の人なので市役所に行けば終わり、
銀行は6行ほど、みんな横浜駅周辺に支店がある。それで100万。
奥さんは悔しくてなんとか自分でやろうとして相談に来たわけである。
面倒な手続きを人に頼むのは自然なことだし、それを引き受けて仕事にするのも
なんらおかしくはない。
ただ、報酬が適正か?
実際、行政書士がそういう戸籍の収集や銀行関係の相続手続きをやっているが、
どうなんだろ、このケースだと20万前後?、それくらいの報酬じゃなかろうか。
信託銀行などがやっている遺言信託の報酬はなかなかのものである。
遺産の総額の1%、最低報酬100万という案内を以前見たことがある。
最近は遺産の金額によって段階的に報酬の%を変えるところもあるらしいが、
いずれにしろかなり高額な報酬。
東京あたりで不動産の評価が高ければ、実際にする仕事は数件の銀行の相続手続き
だけであっても、数百万の報酬になるわけである。
で、引き受けた信託銀行が必ず遺言執行人に就任するのである。
遺言執行人が本当に必要になるのは、
遺言による認知とか、推定相続人の廃除とか、そういうケースである。
夫婦ふたりが互いに自分が死んだら相手に全財産を相続させるという遺言に
遺言執行人は必要なのか?
結局、相続人のために遺言執行人になるのではなく、
営利事業として都合よく仕事を進めるために信託銀行が遺言執行人に就任し、
相続を仕切り高額な報酬を請求する。
実際にする仕事とその報酬は見合っているか?
遺言信託をするのは高齢者である。
高齢者が食い物にされているようで、相談者が帰ったあとひさしぶりに気分が悪かった。
不相当に高額な報酬については行政がもっと指導するべきではないのか?
営利法人が遺言執行人に就任することの是非も検討されるべき問題ではないのだろうか?