金木犀甘くにほへるその下に今日の工事の残材を捨つ
/ 小林真代
建設業を生業とする作者の歌。
一日の仕事を終え、金木犀の香る下に残材を捨てる。
廃材の処理業者のところに持ち込むのか、
あるいは建設現場の一角にとりあえず廃材を集めておき、
あとで産廃業者が収集に来るのか、
いずれにしろ、ただそれだけの歌であるが、
日々の仕事の何気ない場面が味わい深い。
上手く作ろうとしない、綺麗に詠もうとしないところがこの作者らしい。
女性でこういう現場の歌を詠う人は少ないかもしれない。
この作者とは歌会で一緒になったことがある。
その歌会で私は彼女の歌に一票入れた。
夢のなかで母のクローゼットに入ったらそのなかの服のなんと絢爛豪華、
とかいうアホみたいな歌だったのだが、
およそ短歌で「絢爛豪華」なんて言葉を使うようなヤツは滅多にいない。
そういう言葉をあえて使ってくるのが面白いと思い一票入れたのだった。
その後、結社の新人賞を取った。
やはり力のある作者だった。
歌集『Turf』のなかにはほかにも良い歌が多い。
初めての試合は小林VS小林うちの子は負けたほうの小林
警戒区域へ修理業者の同行が許可され我はどこまでゆけるか
儲け話どこかにないかとぼやく人に大工が真面目に除染を勧む
自分のことばかりしてゐし一日の日記書くときひとをおもひぬ
これからもいい歌を詠ってほしいと思う。
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今年一年ありがとうございました。
来年もよろしくお願いいたします。
それでは良い年をお迎えください。