ひさしぶりに湘南歌会。4月以来かな?
例によって気になった歌。
誌面発表前なのでここには出せないが、
茶色くうねる流れに潜むもの白粉花を掲げてゆく、
そんな歌意の歌。
選歌ではひとりしか採っていなかったが、いい歌である。
大雨で増水し激しく流れる川。
岸に生えていたのであろう白粉花が激しい水流に根こそぎにされ株ごと流されてゆく。
濁った川を流されてゆく鮮やかな赤い白粉花。
それは流れに潜む川の神が掲げてゆくようだ…。
情景が浮かぶし発想もいい。
いい歌なのだが、どうも引っ掛かった。
濁った流れに潜むなにものか、川の神、水神、あるいはそれ以外のもの。
そのなにものかが根こそぎの白粉花を篝火のように掲げてゆく。
このシーンを思い起こさせるには上句がおとなしいというのか、ありきたりというのか。
そんな気がした。
岸に生えていた白粉花を根こそぎにして流してゆく増水した川。
もう少しそういう川の描写が欲しい気がする。
「うねる」という言葉は、大きくゆっくりとした動きをイメージさせる気がするのである。
「海がうねる」にしても「道がうねる」にしても、
激しい流れ、激しい曲折ではない気がする。
明治の時代、ヨーロッパから招かれた治水技師が日本の川を見て、
「日本の川は川ではない、滝だ」と言ったという。
そういう日本の川の、しかも最近の豪雨で増水し激しく流れる川。
「うねる」にしてももっと激しくうねっているような、そんな感じがするのだが、
どうも、上句がそういう川を描写しきれていない気がした。
確かに上句だけの字数の制限はあるわけで、難しい気はするのだが…。
じゃ、自分ならどう推敲するかと歌会の最中、考えていたのだが、やはり難しい。
ま、自分では難しいと思っても、しゃあしゃあと批評するのが歌会ではある(^^;
ところで「白粉花」という花の名前もこの歌のなかでは面白い。
漢字は「白粉花」で「白」が目につく。
実際の白粉花は「赤」「黄」「白」がある。
しかし、この歌のなかでこの白粉花は間違いなく赤い花である。
川の神が掲げてゆく篝火のような赤い白粉花でなければならぬ。
そういう情景を思い起こさせる歌として、上句が力不足の気がするのである。
暑い盛りの湘南歌会、いろいろ言い合って楽しんで、
歌会のあとは軽く一杯飲みながら短歌の話で盛り上がった。
やはり歌会は楽しい。
コロナが相変わらず広がっているが、こういう場は大切にしたい(^^
こぶしは7月くらいに花芽をつけ、そのまま年を越して翌年の春に咲く。
花芽で過ごす期間がかなり長い。