感情は理性を超えるものなればぜひもなし椿まつかに咲けよ
/ 馬場あき子
「ぜひもなし」と言い切っているところがいい。
これだけ涼やかに言い切られると気持ちがいい。
上句と下句をいかにつなげるか、短歌を詠む人間ならみな悩むところだが、
つなげかたで気を付けることのひとつが、因果関係を感じさせない、ということ。
しばらく前の歌会で、やはりこのつなげかたで気になったのだ。
上手な歌だった。
上手な歌だったのだが、それ以前の歌会で同じような上句の表現の歌が出ていて
作者が分かった。
同じ上句を使って試行錯誤しているのだろうと思ったのだが、
なまじ作者が分かり、同じような上句で作っているのが分かったので、
下句へのつなぎかたに、わざとらしさを感じた。
総評の人が「上句と下句に因果関係がないからいい」というようなことを言っていたが、
むしろそれが気になったのである。因果関係がないようにつなげる、
それが透けて見えていた。
しかし、それは以前の歌会で同じような歌を見ていた、ということで
予断の入った批評になるかもしれないので、それ以上は言わないでいた。
長く短歌をやっていると、パターンのようなものが身に付く。
作歌のパターンもあるし批評のパターンもあるわけで、
そのパターンを頭に入れて歌を作り、そのパターンに当てはめて批評をする。
短歌を長くやっているとそうなるのかもしれないが、それが嫌なのだ。
そういうふうに短歌を作り批評をしていると、
歌が小さくなってしまう気がする。
そういうことを忘れずに短歌と向き合っていきたい。
ぜひもなし。








