夏、花火の季節。
日本では室町時代あたりから花火は記録に出てくるらしいが、
庶民が楽しむようになったのは江戸時代から。
両国の川開きの花火、「玉屋」「鍵屋」は有名である。
その頃の花火は橙色の濃淡だけの単色だったらしいが、
明治以降、赤、青、黄色等、花火はカラフルになったらしい。
花火といえば幾つかの歌がある。
音たかく夜空に花火うち開きわれは隈なく奪われている
/ 中城ふみ子
くらぐらと赤大輪の花火散り忘れむことを強く忘れよ
/ 小池 光
大きな綺麗な花火が上がりました的な、単純に自分の感動を詠っても
やはり名歌にはならないわけで、中城の歌も小池の歌も、ちょっと影がある。
ちなみに私も自分の歌集の花火の歌を探してみたら、ひとつだけあった。
公園の花火を囲む輪のなかに浮き上がりたり幾つかの顔
夏は死者の還ってくる季節。
浮き上がった顔のなかにあるいは死者の顔も交じっているかもしれない。
子供の頃の線香花火の記憶も、
今はなき家族の記憶と重なっていたりするわけで、
日本人はたぶん、花火に美しさだけを見てきたのではない、