短歌結社の全国大会二日目、皆が真面目に歌会をやっている頃、
歌会はパスさせてもらって、宿を出て東山三条からバスに乗り銀閣寺へ。
銀閣寺道というバス停で降りて道路を渡れば「哲学の道」という標識がある。
琵琶湖疎水に沿ってここから熊野若王子まで続いている道が「哲学の道」で、
哲学者の西田幾多郎が散策していたので「哲学の道」と呼ばれるようになったらしい。
疎水沿いに桜が続く道で、4月あたりはさぞ綺麗だろう。
そう長い道ではなく、熊野若王子まで距離にして4kぐらいか。
その「哲学の道」をしばらく行けば向こうに慈照寺の参道が見えてくる。
ちなみに「銀閣寺」とフツーに言われるし、バス停も「銀閣寺道」なのだが、
銀閣寺という寺はない。
正確には慈照寺、その慈照寺のなかの建物のひとつが銀閣である。
さらにいえばその銀閣も通称で、建物の本来の名前は観音殿。
江戸時代あたりから鹿苑寺の金閣と並べて銀閣と言われるようになったらしく、
それ以前は銀閣とは言っていなかったらしい。
もとは足利義政が建てた東山殿。山荘として建てられたが義政の死後、寺になった。
落ち着いた感じの参道を行くと向こうに慈照寺の入り口。
なかに入れば、池のほとりに銀閣がある。
手前に広がるのは銀沙灘と向月台。
砂で表現しているのがなんなのかはよく分からないが造形としては面白い。
写真を撮っている観光客が多いので、テキトーに眺めて先に進む。
庭園は苔が感じよく広がっていて外国からの観光客にとっては、こういうのは結構
エキゾチックなのではなかろうか、
苔を庭園の重要な要素として使うというのは日本以外ではあるんだろうか?
日本的な美の感覚みたいなものが感じられる。
庭園を歩いていくと山に登っていく感じになり、途中に銀閣を見下ろすような一角がある。ちょっと面白いアングルだ。
慈照寺を出て参道を戻り、熊野若王子へ続く「哲学の道」に入る。
人通りはそれ程多くはなく静かな道である。疎水を覗くと魚が泳いでいたりする。
ずっと桜が続いていて、この辺に住んでいる人達は家にいて花見ができそうで羨ましい。
今日はそれ程ではないが、それなりに観光客は歩くのだろう、道沿いに点々とお店がある。
しばらく行くと左に法然院。
鎌倉時代、法然が庵を結んだところらしい。
さほど大きくはないが趣きのある寺である。
暑いときは昔ながらの氷水
法然院山門
さらに「哲学の道」を進む。
慈照寺から南にくだっているのだが、この辺りに来ると疎水の向こう側は山になり、
絵を描いている人もいたりして趣きのある落ち着いた雰囲気。
それにしてもやはり8月、曇っていて気温はそう高くないのだが、
ちょっと湿気が多いせいか、歩いていてかなり汗ばむ。
しばらく行くと、なにやら猫が沢山いる。
道の傍らの廃業した喫茶店のようなところに猫が沢山住み着いているようで、
放置された乳母車ぐらいの大きさの馬車の形の置物?に子猫が何匹もかたまって気持ち
よさそうに寝ている。他の猫も人間を警戒しているようなそぶりが全くなく、
周囲の人達に可愛がられているのだろうか。
帰ってからネットで調べてみたら、「哲学の道」のちょっと有名な猫ポイントであるらしい。
その先しばらく行くと道は突き当りになり、そこを左に行けば熊野若王子。
ここで「哲学の道」は終わり。
熊野若王子は後白河法皇が熊野権現を勧請して建てたものらしいが、
行ってみると地元の子供会かあるいは祭なのか、
本殿にビニールプールを広げて子供達が水遊びをしている。そばにいたおばちゃんが
「すいませんね、お参りの邪魔で」と言うので、いえいえ構いませんと返事して、
水遊びしている子供達越しに向こうの祭壇に二礼二拍手一礼。
頼朝をして日本国第一の大天狗と言わしめた後白河法皇の建てた神社も、
今は地元の人達の生活のなかにあるらしい。むしろ好感を覚える。
ここからほんの少し南に行くと禅林寺、永観堂で有名なところ。
ここも紅葉の季節はさぞ綺麗だろうというところだ。
熊野若王子
禅林寺
そしてこの隣りが南禅寺。
石川五右衛門がそこに登って京の街を眺め「絶景かな絶景かな」と言ったという山門は
なかなか立派。寺の境内にある琵琶湖疎水の水道橋の写真も観光案内などでよく出てきて
有名なところだ。歩いてきた「哲学の道」と比べるとだいぶ観光客が増える。
9時に宿を出て、南禅寺でちょうど昼。湯豆腐で有名なところなので昼飯にする。
豆腐の看板を出している店が結構あり、そのうちの一軒へ。さすがに暑いので湯豆腐では
なく冷たいおぼろ豆腐と素麺のセットにしたが、天麩羅がなかなか美味かった。
南禅寺 山門
南禅寺 水路閣 琵琶湖疏水が流れている
南禅寺 方丈
南禅寺 庭園
ここからさらに知恩院・八坂神社と歩いて祇園に出るつもりだったのだが、
帰りの新幹線の時間があるので、食事を終えて平安神宮まで歩き、そこからバスに乗って
京都駅に戻る。バスのなかで随分大きな雷が聞こえた。
ちょうどいいタイミングでバスに乗ったらしい。
駅で土産と今日の夕飯に名物の鯖寿司を買って結構急いで新幹線のホームへ。
ちなみにこの鯖寿司も美味かった。
今回歩いた「哲学の道」は、半日ぐらいで歩ける歴史と趣きのある散策ルートである。
桜や紅葉の季節に行くのが良いと思うが、そういう季節は人も多いのかもしれない。
一年に一度はこんな風に京都を歩いて楽しみたいと思っている。
ただ、次は8月でなく涼しい季節にしたい、今回はだいぶ汗をかいた(^^;