「先生、降ってきまたしたよ!」
税務調査の立会の最中、会社の経理の事務員さんの声。
どうも雲行きが怪しかったのだが、とうとう降ってきた、と思うまもなく
ドドッという強い降りに変わった。
「えっ! 先生のとこのワンちゃん、外に出てるんでしょ?」
昼休み、ペットの話をしていて、今日は天気がいいので犬を外に出したままで来たと
いうような話をしていたのだった。
ゴールデンレトリバーのさくら。
庭と玄関を自由に出入りできるようにして飼っているのだが、
今日は家の者が誰もいなくて、私は一日税務調査の立会。幸い、天気予報では一日
いい天気ということだったので、庭に出したままで来た。
ところが、昼過ぎから空が暗くなって、これは?と思っていたら、
いきなり凄い勢いで降ってきた。しかも雷まで鳴っている。
どうしよう~と思った。
時計を見ると3時30分。
通常、税務調査は10時から4時あたりまでやる。
調査官が帰るまであと30分くらいか...。
「凄い降りですよ。帰った方がいいですよ。ワンちゃん可哀そう、命の方が大事」
雨に叩かれてもそう命にはかかわらないと思うのだが、さすがに困った。
話を聞いていた調査官、
「あとしばらく調べて帰りますけど、なんでしたらお先に帰って頂いても結構ですよ」
そう言ってくれるのは有り難いが、
まさか、税理士が税務調査の途中で帰るってわけにいかないでしょう...。
横から社長さんも一言、
「いいですよ、何かあったらあとで連絡しますから」
周囲からそう言われると、だんだんその気になる。
ま、会社の経理もしっかりしているし、
調べにきた調査官もたまにいる癖の悪い向きではないから、
30分先に帰らせてもらっても大丈夫か...。
「あと30分ぐらいですよね、いいですか? ちょっと先に帰らせて頂いて。
ずぶ濡れになっちゃってると思うので、すみません」
最後に社長に、
「税理士のいないところで何か聞かれても中途半端な返事しないでくださいね」
と言ったら、社長も調査官もずっこけていた(^^;
車を飛ばして帰ると、家の方はなぜかあまり降っていない。
温暖化の影響なのか、局地的にどっと降る、そういう雨だったらしい。
家に着くと、さくらが「早かったね」という感じで迎えに出てきた。
触ってみると少し毛が湿っているぐらい。
あわてて帰らなくても大丈夫だったのだ。
かなり暗くなっていたのに、雲が切れて日も差してきた。
まだ夕方だが、帰ってきてしまったので、その日は仕事はそれで終わりにして、
翌日、2日目の調査に立ち会い、無事に調査終了。
結局たいした問題もなく終わった税務調査だから笑い話ですむけど、
というか、問題出そうだなと思ったら帰らないわけだが、
税理士が、犬が濡れるからと言って税務調査を中座して帰ったのって、
前代未聞だろうな(^^;;